「まちだをめぐる〜じぶんを創ったばしょ・もの・ひと〜」 第2輪
「玉川大学 椿敏幸さん編」
こんにちは!
まちだはまちだプロジェクトの塚原です。
まちだをめぐる 〜自分を創ったばしょ・もの・ひと〜
第2輪は、前回のインタビュイー羽田さんから紹介してくださった人物
「玉川大学 椿敏幸さん編」をお送りします!
「椿さんからは、《仕事》と《陶芸作家としての活動》をバランスをとりながら両立させる、
ということを学んだひとです。
椿さんは忙しい中でも必ず何かを作っていました。『火を見るのがすきだから』とよく言っていたので、
ナチュラルに《つくること》が好きな人なんだなー、と思っていました。」と、羽田さんは語ってくれました。
羽田さんと椿さんは、昔の同僚です。それは25年以上も前のことになるそうです。
お二人は玉川大学で文学部芸術学科(現在の芸術学部)の助手を務めており、
羽田さんはデザイン専攻の助手、椿さんは陶芸専攻の助手でした。
現在椿さんは玉川大学の教授、羽田さんはアトリエ・アルケミストの主宰。
お互いに違う場所で活躍していますが今でも何かと交流があり、
椿さんは、「羽田さんとは『くされ縁』でつながっている」と言っていました。
実は、私自身も椿さんにはとてもお世話になっていました。
大学時代の恩師で、授業だけではなく、
椿さんがいつもいる「陶芸教室」と私が専攻していた絵画の授業が行われている「実技・実験棟」が
とても近いこともあり、よく遊びに行っていました。
「アトリエ・アルケミストのスタッフやってみない?」と声をかけていただいたのも椿さんです。
椿さんと玉川学園(大学)の出会いは椿さんの中学時代まで遡ります。
どこの高校に進学しようか考えていた時期、椿さんは「学園」という文字がついている高校なら
響きがかっこいいからどこでもよかったそうです。
候補の中のひとつに玉川学園があり、学園の雰囲気をつかむために体育祭に行ったところ、
椿さんはとてつもなく広い校庭に驚きました。
「もはや公園じゃん!」と思ったそうです。
そして、進路の先生に「玉川学園行きたいです」と伝えたところ、たまたまその先生が玉川大学出身で、
「お前にあってるよ!」と言われ、それが決め手になり玉川学園に進学した、
というのが玉川学園とのファーストコンタクトだったそうです。
色々な機械や物があり雑然としていますが、不思議と落ち着く空間です。
玉川学園の授業の中に「自由研究」という授業があります。
「自由研究」は、様々な分野から自分で選んだ分野の学問を研究できる授業です。
高校生は、油絵・ファッション・英語劇・歴史学・ロボットなど、
40以上もの分野から選ぶことができます。(2017年度情報)
椿さんは、そこで陶芸の分野を選びました。
理由は、友達が陶芸を選んでいたから、といった軽い理由だったそうです。
しかし、はじめて陶芸に触れた時、椿さんに衝撃が走りました。
粘土の感触や、粘土を焼くということ、全てが初めての体験で面白く、
やればやるほど椿さんは陶芸にのめりこんでいきました。
陶芸にどんどん夢中になり、そして「自分には陶芸しかない。これで食べていこうかなあ」と思うようになったそうです。
そして、玉川大学にも芸術専攻があったため、エスカレーター式に玉川大学に進学しました。
大学卒業後は芸術専攻の助手になり、アメリカに留学し、大学院に行き、そして玉川大学に講師として戻ってきた椿さん、
「人生の3分の2は町田で過ごしているなあ」と言っていました。
椿さんの作品は、様々な柄をつなぎあわせたパッチワーク的な模様が印象的です。
本当に可愛らしく、大学時代とっても欲しくて茶碗を購入しようと思い、
値段を見たら学生のお小遣いではとても買えそうになくしょんぼりしたことをいまだに覚えています。
(今なら頑張れば買えそうです)
その印象的なパッチワーク模様は、町田市立国際版画美術館で毎年行われているイベント
「ゆうゆう版画美術館まつり」のワークショップに玉川大学の学生と参加したことがきっかけで思いついたそうです。
そのワークショップは、町田の木のコレクションを採取しよう!といったもので、
あらかじめ町田市内にある樹木に粘土を押し当てて作った型の上から、こどもたちが紙粘土を押し当てることによって
樹木の木目をそのまま採取できる、といった内容でした。
椿さんは木目の有機的な模様に惹かれ、なにかこの模様を使って制作ができないか、と思ったそうです。
そこで思いついたものが、木目の自然的・有機的な模様と、柄や幾何学的なパターンの無機的な模様を組み合わせた、
一見ばらばらのものを組み合わせるという、パッチワークのような柄でした。
有機的と無機的なものの複合を見た時、椿さんは「まるで町田の街みたいだなあ」と思ったそうです。
椿さんにとって町田の街とはどんな街ですか?と聞いたところ、
変にかざらない、ありのままの姿で居心地がいい。
自然もある、でも都会もある、でも都会すぎない。そんな「ちょうど良さ」みたいなものを感じられる街だと思う。
町田から都心へ出ていってしまう方も多いけれども、
ちょうど良さを感じられる町田だからこそ、戻ってくる人も多い気がする。
と言っていました。
私が取材に行った時は、たまたま学生は陶芸教室にひとりもいませんでしたが、
いつもは制作している学生や、陶芸専攻の学生同士でおしゃべりを楽しんでいる学生たちでにぎわっています。
私も学生時代はそのうちのひとりでした。
その居心地のいい空間を作り上げているのは、他でもない椿さんなんだな、と確信しました。
椿さんのありのままに生きる姿勢や、変にかざらない部分が落ち着くのかもしれません。
人生の3分の2を町田で過ごし、他の場所で3分の1過ごしてきた椿さんだからこそわかる、
町田の良さを語ってもらえました。
次回の「まちだをめぐる〜じぶんを創ったばしょ・もの・ひと〜」は、
まちだで出会った「椿さん自身を創ったばしょ・ひと・もの」をご紹介します。
お楽しみに!
(文・写真)塚原結友
<椿 敏幸 プロフィール>
椿 敏幸
1969年横浜生まれ
玉川大学文学部芸術学科卒業、京都精華大学大学院陶芸専攻修了
国際陶芸大展(韓国)特選、大地の芸術祭・公募妻有焼展 大賞などを受賞
その他国内外グループ展 個展等で発表
現在、玉川大学芸術学部芸術教育学科教授として、
学生の指導、教材研究などを行なっている