成瀬の駅に着くと、ホームではピンとした尾羽の小鳥がお出迎え。
降りるひとたちの流れから外れて、ぴょこぴょこと歩き回るのを見守っているうちに、電車も発車してまっすぐ線路の向こうに消えていった。
ターミナルの方へ出ると、高校生の頃に塾へ通っていた頃のことをいつも思い出す。
バスもタクシーも多くはなくて、この新しいお店ができる前はなんだったかなとぼんやり考えながら、坂道を進む。
ターミナルからすぐに坂道。
坂の多いのが町田の特徴。
駅から少し歩くとすぐに住宅街。
ゆるゆると曲がる道が、ぐっとS字にカーブしたり、ここは普段の暮らしのある街並み。
空が広くて気持ちいい。久しぶりに晴れて、冬らしい水彩の青。
右手には上り坂。
キュビズムの作品みたいに四角が重なり合う。
閉じたシャッターの淡い青と赤の対比に物語を連想する。
どんなお店だったんだろう?
左手には下り坂。向こうの方に体育館が見える。
気が付いたら右手に下り坂が現れた。
突き当たりも近いのでもう少し進んでから降りてみよう。
丁字路は車の通りも多い。
坂を降りていくと、並木が桜なことに気付く。
まだまだ寒くてつぼみも見えないけれど、春になればここにピンク色のアーチが現れるんだ。
冬が終わるまでもう少し、もう少し。
坂の下まで降りてくると、小さな川と交差する。
高台の鉄塔の影が水面に映る。
上の方の広場まで行ってみよう。
枯葉の中の階段を登っていくと、松ぼっくりがポツリ。
ここまで来たんだねと話しかけてくれてるみたい。
てくてく歩いてきたよと答えながら、もと来た道を振り返る。
特別なことはなくてもいい。
いつもの街が好き。
<文・写真:北村友宏>