「まちだの酉の市・浄運寺・11月18日」
いつもこのへんにいるキタムラが書く町田のこと。
変わらないことも特別なことも、この街にいるから気付いていられる。
二の酉を過ぎると秋が終わる。
少しずつ寒くなるにつれて、音楽と食と再会への期待でそわそわしてくる。
町田の酉の市はちょっと違うんだ。
場所は駅からすぐ、109の裏手のまっすぐ続く道から一歩入ったところ。
普段は穏やかな「浄運寺」の境内。
3年前から酉の市を「にぎやかす」イベントが始まり、
地元のお店が屋台を出し、個性の強いミュージシャンたちが演奏する独特の空間になった。熊手も売るし、お経も詠む。
そこに音楽と食と酒につられて、世代も好みも超えていろんなひとたちが集まってくる。
山門をくぐり、屋台に近づくと久しぶりにご挨拶する店主たち。
「お、来た、来た!」
「ご無沙汰してます!」
手を振ってくれる方も、ずっと行きたかったお店の屋台に気付いて、一品頼むついでに話しかけてみたり。
山門を抜けると正面に本堂、左手には熊手、右手の鐘の隣では演奏が始まっている。
久しぶりに聴いた曲に、去年の酉の市の記憶が蘇る。
屋台のチャイを飲んでいると、いつのまにか「寒いよね」「雨止んでよかったよ」なんて会話が始まる。
いつもの友達とはもちろん、そこかしこで、あの店で会った、あの時のライブにもいた、そんなひとたちが挨拶を交わしている。
陽が沈み始めると、にぎわいも増していく。
踊り、笑い、乾杯も、そして演奏と拍子木の音も重なる。
ラーメン屋の焼きそばが完売した。蕎麦屋の豚汁で暖まる。
山門前のステージにも人だかりができている。
子供連れで楽しむひとたち、不思議そうに境内へ入っていくひとたち、
熊手を担いで帰っていくひとたち。
音楽に溺れ続けて冷静さがなくなりかけた頃、
トドメとばかりにバグパイプを響かせながら2人組が山門を行進してくる。
ロックでパンクなバグパイプに、和と洋が混ざり合う。
境内の真ん中で演奏する2人をビール片手に取り囲む。
星もない空に提灯が浮かんでいる。
寒いなぁと思いながらも、興奮でアタマの中は熱くなっている。
少しずつ静かになっていく浄運寺で
「また会おう、来年とは言わず近いうち」
そんな風に話して別れる。
この街で一年を過ごした、その実感をこの日この時に感じる。
<文・写真:北村友宏>